« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »

2009年11月27日 (金)

とろける その2

 何となく、とろけるはあたらしいことばかと思っていたが、まったくそうではないらしい。古語辞典にはとらかす(盪かす・蕩かす)ということばが「とろかす」の古形として「(1)(金属など)固形物をとかす。(2)正体を失わせる。心のしまりをなくさせる。心を和らげる」と載っている(旺文社 古語辞典 新版)。
 盪も蕩も「トウ」と読む。共通しているのは「動く。動かす」と「ほしいまま」「大きい」の三つの意味。ホウトウ息子の放蕩(盪)だ。盪が「はやい」という意味ももつのに対し、蕩には「ゆるやか。おだやか」という意味がある(旺文社 漢和辞典 新版)。
 蕩蕩(とうとう:大河の形容によくつかわれる)はすてきなことばだけれど、どちらかというとこの字は「酒色におぼれる」という意味でつかわれることが多いような。常用漢字ではないのでその心配はあまりないが、食べ物につかうときは、やっぱりひらがなで。

(C) Nihonbungeisha All Rights Reserved 無断転載禁止
http://www.nihonbungeisha.co.jp/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月20日 (金)

とろける

 ワインの季節到来。グラス片手にチーズをかじりながら、ふと思った。「とける」と「とろける」どう違うんだろう?
 とけるは「溶ける:固まっていたものが熱で液状になる」とろけるは「蕩ける:固体が熱でとけて流動体となる」とある(小学館 新選国語辞典 第七版)。つまり「溶ろける」は誤用だ。意味はほぼ同じなのに、漢字がまったく違う。さらに、それぞれ別の意味を持っていて、これが大きく違う。前者は「(2)液体に他の物質が混ざって均一な液体になる」後者は「(2)怒りなどがとけ心がやわらぐ。(3)心のしまりがなくなる。うっとりする」(広辞苑 第六版 岩波書店)。
 とろけるは語感や音もやわらかい。心の動きを表現する意味があるから、よりやわらかくて、とろとろした感じが出るので、チーズの商品名として多用されるのかもしれない。
 おいしそうな名前は大歓迎だけれど、コレステロールの高い身としては、たくさん食べられないのがせつない。

(C) Nihonbungeisha All Rights Reserved 無断転載禁止
http://www.nihonbungeisha.co.jp/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月13日 (金)

炊いたん

 あたたかい煮ものがおいしい季節になった。子どものころ、我が家の煮ものといえば「大根の炊いたん」「れんこんの炊いたん」「たけのこの炊いたん」「こんにゃくの炊いたん」……。祖母が炊いた煮ものだ。
 「炊いたん」は「炊いたもの」。「炊いたの」が音便化したものだろう。でも方言(=口語)だから、文字として意識したことはなかった。「炊く」は辞書に「食物を煮る。かしぐ」とある(小学館 新選国語辞典 第七版)。う~ん、食物というが、ごはん以外にはあまりつかわれない表現では。
 いろいろ辞書を見ていたら、あったあった。「米と水とを加熱して飯を作る。(中略) ▽方言で、一般に煮ることをいう場合もある(岩波 国語辞典 第四版)」やっぱり! 田舎では「煮ようか」は「炊こか」だし「煮て」は「炊いて」だった。
 でも、それをそのまま標準語にもってくると変だ。「炊いたん」というと、宇宙の話(タイタンは土星の第6衛星)みたいに聞こえる。京都のおばんざいが広まって、料理書にも「○○の炊いたん」が登場するようになったんだけど。活字になっても、やっぱり違和感。

(C) Nihonbungeisha All Rights Reserved 無断転載禁止
http://www.nihonbungeisha.co.jp/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月 6日 (金)

~「を」する

 たいていの熟語は名詞であるが、うしろに「する」がついて動詞となるものがある。辞書によって表記は違うが、見出し語の下に「名・他サ」「名・サ変自」「名・-スル」などと示されていることばだ。
 「責任」「衝撃」などの名詞は動詞にはならないが、「決断」「分割」「説明」などは「する」がつくと、自動詞他動詞の差はあってもサ行変格活用の動詞になる。つまり「し(ない/よう)・し(ます)・する・する(とき)・すれ(ば)・しろ/せよ」と活用する。
 最近読んだ本で、内容はすこぶる共感できたのだが、このサ変動詞に「を」を多用しているものがあって、ちょっと気になった。解釈をする、救済をする、請求をする、議論をする……。話し言葉では、考えながら話すときに助詞のあとで一呼吸置いたりするから、このようなつかいかたが増えたのかもしれない。そういえば、知り合いの著者が「『を』がつくと、政治家の答弁みたい」と言っていたことがある。
 たしかに、文章になるとけっこう煩わしい。

(C) Nihonbungeisha All Rights Reserved 無断転載禁止
http://www.nihonbungeisha.co.jp/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »