名画座散歩 ~第3回:渋谷・Q-AXシネマにて。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ にちぶんMOOK『荷風!』Vol,10 10月26日木曜日発売 特集『下町悠々~深川・木場・佃島』東京・下町“南部エリア”を時間旅行する Vol,3 Vol,4 Vol,5 Vol,6 Vol,7 Vol,8 Vol,9 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
21:30~「ヨコハマメリー」(2005/中村高寛監督)上映。
雑踏の中、女の子たちのミニスカート姿にどきどきしながら、道玄坂ラブホテル街にある映画館を目指す。坂の途中にあるQ-AXシネマは今年1月にオープンしたばかり、1階がカフェ、B1階と2階が映画館になっている。座席は全席指定、チケットを買うとカフェの割引券がついてくる。ここで映画関連の雑誌や本をパラパラとめくりながら、時間つぶしができるわけだけれど、コンクリート打ちっぱなし、無機質な空間で、何となく落ち着かない。
館内は徹底してモノトーンに統一されていて、スクリーンだけが白く眩しい。黒っぽいゆったりとしたシートに身を沈めると、天井や壁とともに、自分までもが黒く染まる気がする。周辺にクラブやバーが多いという場所柄、20~30代が多く、スーツ姿はゼロ。あとは白髪交じりのひげをもさもさ生やしてアロハシャツを着ているような、全体的に昼間からビールを飲んでいそうな人種が目立つ。
映画のテーマ曲は「伊勢佐木町ブルース」。
戦後50年間、横浜で娼婦として生き抜いたメリーさんの孤高の生き方、そしてその存在を風景の一部としてきた横浜の懐の深さ。
そういうものに、打ちのめされた。
半分放心状態で映画館を出ると、若き人たちが意味もなくたむろしていて、その吐き出される息は生ぬるくて酒臭く、夢から醒めてしまった。それでも頭を映画に引き戻しながら駅へ向かっていると、ビル群のはるか上の方に、満月より少し欠けた朧げな月が、卵黄のような濃い色の光を放っている。その凛とした姿が、寡黙に孤独を貫いた、メリーさんの姿と重なった。
(文/堀径世)
(C) Nihonbungeisha All Rights Reserved 無断転載禁止
http://www.nihonbungeisha.co.jp/
| 固定リンク

コメント
私にとっての名画座は、銀座の並木通りの並木座。今はないだろう。そう、横浜は懐が深い。かのマッカーサー元帥がグランド・ホテルから東京に出て行くように…。
投稿: no-koi | 2006年10月19日 (木) 14時28分